2006年以前の句 2006年 2007年 2008年 2009年 2010年 2011年 2012年 2013年
2014年

空音の日句帖

2011年 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
       
2011年1月1日 正月も水の如きや妻と二人
白き王雪の朝日は山の上
2011年1月4日 妻は息子に家政のはなし氷頭鱠
2011年1月9日 雪の木の旭我が家一点豪華主義
書初に「歩」と書く息子大丈夫
2011年1月11日 寒の膝痛くしやがる戯(ざ)れの神
2011年1月15日  雪下し
意を決し雪の体に挑みけり
2011年1月17日 妻の留守雪の子宮に一人きり
妻の居る日常恋し雪薄
妻不在降っても降っても雪淋し
2011年1月18日 陽が射すよ雪のあおみは雪の意思
2011年1月19日 飛雪激し還暦過ぎの吾に激し
飛雪激し蒸気機関車はーはーはー
2011年1月28日 平凡な林歩けば春隣
2011年1月29日 凍星流る病父と妻の手つながれば
2011年1月31日 疲れるよ雪の体(たい)体体体体
雑炊ばかりで固いもの欲しソクラテス
2011年2月2日 新聞配達員に山茶花の小道あり
2011年2月3日 悲しみは何処からか来て冬の陽だまり
2011年2月9日 電話来る孤島に小鳥来るごとく
2011年2月10日 限界集落とはいえ裏のよっちゃんつくづくし
待つという祈りのかたち裸木は
2011年2月12日 うわーコロッケ家族楽しき浅春や
2011年2月13日 前歯揃えておやきを食べる春の家族
2011年2月14日 で、地球は持つの 春風に聞く
2011年2月15日 亀鳴けり「おもしろ屋商店」廃業す
2011年2月16日 春風や負けるが勝ち組じゃんけんぽん
2011年2月17日 上着一枚脱いでごらんと雪解風
2011年2月18日 春雨嬉しざーざー降ればなお嬉し
2011年2月18日 残雪の里轟けり蕗の薹
2011年2月25日 早春の野 描きかけのえんぴつ画
2011年2月26日 わー水たまり春の子供等遊ぶかな
2011年3月4日 単純に生きる意志 たんぽぽ咲く
2011年3月5日 きさらぎや石屋の庭の干し褌
2011年3月14日 東北地方太平洋沖地震の津波で 四句
町も家も玩具のごとし流れ逝けり
町が家が逝ってしまったお母さんも
廃虚の虚空にお母さんと少女呼ぶ
私は此処お母さんは何処怒っているの?
2011年3月18日 東北地方太平洋沖地震
春の月ヒトは地のエサ海のエサ

福島原発事故
地を守れ守れと言う妻朧朧(おぼろおぼろ)

2011年3月30日 威張る医師薔薇の造花になっている
2011年4月2日 まだ萌えぬ息子哀しき雑木林
原子炉かつてクレオパトラの鼻だった
2011年4月11日 体液を零しつづける春の山
斎藤茂吉の如き旨味の蕗の薹
2011年4月14日 浅春のある日の土間の明るさよ
2011年4月19日 朧でいい朧の月なら更にいい
朧の夜明けて雨といういたぶり
2011年4月21日 春の水絵の具おとせば絵の具色
春の川たっぷり流る湯のように
2011年4月23日 俳句かな春水に谺する
2011年4月26日 強情や春陰の道とぼとぼとぼ
2011年5月4日 桜一分から二分雨ぽつりぽつり
2011年5月9日 わき腹に木の葉一枚猫帰る
2011年5月11日 雑巾のような日々なり妻不在
2011年5月13日 桜樹ありこの方向に病父あり
2011年5月18日 求道も狂気も刀月の小舟
2011年5月21日 空腹野茨もやもや猫を蹴っ飛ばす
バナナの皮ぐったり往生していたり
2011年5月22日 ズボンのチャック半開の癖あけびの実
2011年5月26日 夏落暉斜面に威張り散らしている
一人狂えばみんな狂うよ蛙の夜
2011年6月3日 この蟻をドストエフスキーと名付けよう
2011年6月4日 無窮というか大団円というか蛙の夜
2011年6月6日 丘の霊園うからはらから茅花達
2011年6月7日 明るい陽炎茅花も墓もはらからも
2011年6月8日 うすく光る墓のはらから茅花茅花
2011年6月9日 死者も生者もつばなつばなの光かな
2011年6月11日 虚か実か天道虫騙しを潰す日々
2011年6月17日 真夏の匂い老百姓の笑い皺
峡に庭あり天道虫騙しの生も死も
地平とは草刈りぐんぐん雲もくもく
2011年6月23日 釣り人の淵との対話やがて星
2011年6月25日 ぶら下がりつづける梅雨の洗濯物
2011年7月5日 俺は生きているか花栗蠢いている
2011年7月9日 インパチェンスの赤い花、風、僕は何者
森閑と恋人達の草いきれ
涼風や確かにこれは君の香
2011年7月12日 風吹けば可笑し可笑しと栗落花
2011年7月16日 借りた本のページを開くかなかなかな
黙 炎昼の底 金蓮花
2011年7月17日 暑すぎてパンツいっちょの涅槃図かな
2011年7月23日 夫婦喧嘩の最中聞こえる鵺の声
2011年7月25日 病父木のよう木の眼で僕を見る
 七月
あれから四月(よつき)ただただ激し蝉時雨

婚に奔(はし)らぬ人の増えし世蝉が鳴く
2011年8月13日 泰山木あちこち不安の草茂る
多動性の吾に妻あり凌霄花
2011年8月23日 何も持たずに出かけた秋の空
2011年8月27日  八月二十四日早朝父死す
隻眼の牛浅間山(あさま)を越えて逝きにけり

2011年8月29日 百日紅まことの愛の如く立つ
2011年8月31日 花瓶に秋水その紫の花君は
2011年9月5日 秋の蝉だんだん土になればこそ
2011年9月9日 多数花向日葵彼女詐欺師かも
2011年9月13日 これが脚見下ろしている夜長かな
2011年9月23日 見よさらに行けども行けども真葛原
2011年10月6日 ゆたかな雨だ安曇野の稲田膨らむ
2011年10月13日 愛する力まだ有りと聞く秋の風
暗澹の晩秋金蓮花行くな
2011年10月25日 栗落つ中栗拾うという管弦楽
昼銀河栗の実落ち且つ拾う者
2011年10月26日 昼銀河栗いが刺し且つ痛き者
2011年10月29日 何も持たずに帰ったすまし汁
2011年10月30日 猿の糞も七竃もある帰り道
2011年11月1日 静かなる黄落広場日が照るよ
2011年11月3日 黄落の圧倒的な情けかな
2011年11月6日 十一月の弦月の客水の音
惑星の熟していたる秋の山
投網か罠かこのキラキラの星座達
2011年11月8日 ベンチの落葉を払って坐る眼に陽の色
2011年11月12日 私なぞ何処にもいない黄菊達
中空に眼(まなこ)煮凝り聞いている
白飯に煮凝融ける笑い顔
祖先は山羊かうんちころころころ
2011年11月18日 砕け散る霜の旭よ観念よ
2011年11月19日 眼鏡と入れ歯が笑い合うかな冬の机上
私信かな隣の山から光る時雨
わが価値は殆ど無料(ただ)なり残る柿
2011年11月29日 凍星よ戸口の錠が開かない
2011年12月7日 冬の画布に妻の画布から生きものを
鉈で指落してしまったクリオネ
2011年12月8日〜17日 出れば皓皓病院外は冬満月
病院は樹看護士は枝移る小鳥
病院は樹のごとし遠山にうす雪
病院は鳥語幼児語唸り声
私は小鳩病院という樹に抱かれて
園芸すみれ看護婦達はみな親切
雪豹の三白眼なり虚空なり
ベンチの霜を尻で融かして吾というもの
2011年12月30日 死に行く者に連翹の束を持ってゆく
2011年12月31日 冬日とは白く輝く車輪かな







俳諧寺