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空音の日句帖 

2007年 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
       
2007年1月1日 大湾曲の響鋼鉄の冬河         
2007年1月5日 初春や猿群走り犬よろこび
2007年1月6日 正月早々フロントガラス曇りがち

雪暗の信濃の川はぬっと現(あ)

一本足スキー地球の中心を向く

2007年1月8日 一月八日静かな雪原にいのちあり    
2007年1月11日 玲瓏として冬晴れの爪を切る
2007年1月14日 白い寒灯白猫そして白い妻
2007年1月18日 裾花(すそばな)水系放屁をすればああ可笑し
2007年1月19日 冬の川水光(みで)りに酔うてしまいはあ
2007年1月20日 冬温し禿頭人は生き易い
2007年1月22日 冬川の眩しかりけり黄鶺鴒
2007年1月24日 栗鼠よぎるその眼ありありかわいいよ
2007年1月29日 女陰(ほと)(かな)しかなしかなしい大地かな
2007年2月2日 冬温し言葉がだんだん遠くなる
2007年2月3日 節分の空の青さを犬と見る
2007年2月4日 立春という言葉光れば吹雪光る
2007年2月5日 早春の居眠り地蔵歩き出す       
2007年2月9日 冬の水栓ぽたぽた森は生きている
2007年2月10日 淋しさや春を映せば水溜り       
2007年2月12日 厠の壁に頭(ず)をつけ沈思黙考の形   
2007年2月13日 針供養せねば中指の棘が痛い

厠から春の光を拝むかな

2007年2月16日 早春や頬運ばれて駆けてゆく
2007年2月21日 早春や町へ画材を買いに行く

野や眠し雪解の川の水照(みで)りにて

2007年2月26日 春落葉己の影と犬の影
2007年2月27日 蕗の薹に我が影落ちる広野かな

犬が嗅ぐ犬のふぐりや銀河系

2007年3月1日 春の音楽福寿草ガラス瓶に
2007年3月2日 春昼やわれは眠たい男かな
2007年3月3日 陽炎のこの道 ずっと歩きたい
2007年3月5日 春の谷蝶はいちもくさんだった
2007年3月8日 水仙の蕾雪解を聞いている
2007年3月11日 嬉しげに薬缶沸きおり春寒し
2007年3月17日 この道やむしろ陽炎ぴちゃぴちゃと
2007年3月18日 鴉鳴いて目的の無い散歩と気付く
2007年3月19日 答えはいつも風に吹かれて蕗ッ玉
2007年3月21日 春風に自転車一台消えゆけり
2007年3月22日
放送記念日北斗は樅の梢に寝る
2007年3月23日 散骨の春の山には毛が生えて
2007年3月27日 ラジオの中朧なるゆえ修理できず
2007年3月29日 がくんがくんと自我揺れてから春の月
2007年3月31日 小鳥来て咲かぬ桜に騒ぐかな
2007年4月1日 春雷や野山ころがり遊びおり

どこにでもついてくる白猫の春

2007年4月3日 月に呼ばれて川音現る春の峡   
2007年4月4日 痰飛ばし春の光にうしろめた

あたたかき朝の尿なり春の霜

2007年4月8日 チェロ奏者一息つけば花ぐもり

春耕後摩羅のごと萎え草に伏す

春夕焼この身体(からだ)捧げられている

2007年4月10日 自殺した友の事を思い出す
春の星君は生身で駆け抜けた
2007年4月14日 耕せばほとほと沈みゆく夕陽    
2007年4月15日 ほちょほちょと擽り鳴きの鴬や
連山の夕陽に欠伸とは豪華
2007年4月16日 花の色愛(かな)しき海に触りけり

僕の涙に触れて咲いている桜

2007年4月18日 あたたかき尿捨てる如いつか肉体
2007年4月20日 夕日砕けて寝っ転がってまた耕す
2007年4月22日 椿象を見つめる癖も山住い

散骨の春山に来し妻の精気   

2007年4月25日 言葉遠くいのちの桜咲きにけり

春の夕日に体差し出す時透明

2007年4月28日 探しても何処にも居ないさくらさくら
2007年5月3日 鳥一羽静かに過ぎて山桜

喰われたい春満月に狼なり

2007年5月5日 永き日の胸の帆に鳥影の来て

春満月に欠伸してから眠るかな   

2007年5月6日 ときどき象鼻上げ光吸いにけり

動物園たたずむ象の朧の夜

2007年5月9日 初夏の鵺(ぬえ)の夜明のしんかんと

排便の友として亀虫のありはつなつ

沈黙の吾沈黙の土の上   

沈黙の午後沈黙の夏の蝶

2007年5月11日 山吹の怒濤のごとき斜面かな
2007年5月12日 結局は吾は汝の胎児(こ)春の海
2007年5月14日 菜の花の群れ咲く奥の昏(くら)い湖(うみ)

逝く春やうすく明るしデイケアー

安曇野曇り植田植えない田

夏の明森はすでに蠢いていた

白き道見えていて耕しており

2007年5月21日 吾を探せば何処にもいない新樹山
2007年5月23日 初夏や車窓開いてバナナ食ぶ

ていねいに種落す間に暮れにけり

永劫の化石のごとく夏の月  

緑野漂流夏の布団は筏かな

蛙らよ生はロックだ祝祭だ

2007年5月27日 柿若葉君の大地は壊させない

夕藤に夕月とは優し過ぎる

2007年6月1日 花アカシア胸はどうしてキュッとなるの

葉桜やいのち濃(こ)みどりうすみどり

2007年6月6日 胎の世のなま熱き風麦の花   
2007年6月9日 よーしよーしハハハハハハと蝦夷春蝉

死や生や響く響くよ蝉時雨   

2007年6月13日 考える人厠で蝉時雨を聴く
2007年6月14日 蜥蜴の行方少年は神秘を食べる
2007年6月15日 草蒸れて思考澄まざるをえない
2007年6月18日 きもちのよい青野行ってしまえ行ってしまえ

性器は泉肉体は一本の木

2007年6月19日 パソコンの前猫と俺居てそれぞれの梅雨
2007年6月20日 苺苺どうして君は苺なの

この頃の朝は萵苣萵苣土ということ

2007年6月21日 パソコンの前瞑想的な蜂の骸
2007年6月23日 犬撫でながら空見上げれば巻雲
2007年6月28日 妻抱(いだ)くむしかりの花亡猫(ねこ)のごとく

水がうまい梅雨の夕日に言いにけり 

特20
2007年6月29日 沈黙の茂り動物病院前
2007年7月1日 物干しのシャツの継ぎ当て雲に鳥   
麦の黄色肯定的に生き抜くぞ  
白蝶に白猫跳んで午後翳る
2007年7月3日 梅雨晴れ間桃色額紫陽花の悦び
2007年7月5日 波動のよう黄蝶茂りに触れ止まぬ  特20
2007年7月7日 夜の国道狸に出会う星祭  特20
2007年7月10日 病葉や愛の力を試されている

(お)しや愛しこの世愛しや蝉が鳴く 


2007年7月11日 キリストの愛にも似しかどくだみの花
2007年7月20日 猫と妻畠に沈みひぐらし
2007年7月24日 何でもない生の如くに虹が立つ

腹がへっては俳句が書けねえ竹煮草 

特20

梅雨の橋流体の魅力眺めいる 

特20
2007年7月26日 山に蜩今夜はふりかけごはんかな  特20
2007年7月28日 妻の鼻歌曲がり胡瓜のよう自在  特20

なま赤き夏の月だよこの世だよ 

特20
2007年7月31日 糞は出る吾(あ)は考える蝉は鳴く

木洩陽の道つづく奥未知の国 

特20

歩けば太陽さんさんくずの葉くるみの木

特20
2007年8月3日 あーあこのまま寝ているもよし朝ひぐらし 特20

朝ひぐらし子供として起き子供として死ぬ

風に乗り病葉ひとつ天に行く 

特20

中天の病葉落ちるな落ちるなよ 

特20

嬉しい日ひぐらしの声もっと冷えよ 

特20
2007年8月5日 煮詰まって蝉鳴きだすや木々光り  特20
2007年8月6日 原爆忌おいらは山で薪切りおる    

かなかなとごろごろさまと薪割る音 

特20
2007年8月10日 林立の玉蜀黍や熱の静かさ  特20

強い日差しアスファルトに咲く姫女

ためらいも無し闇闇(あんあん)と揚羽交む 

特20
2007年8月11日 南無観音紫蘇スパゲッティー昼の虫  特20

八月の煙突掃除抒情かな  

2007年8月13日 どきどきと木洩陽の道木洩陽になる

美人美人と猫からかって涼しかり 

特20
2007年8月14日 天上の流星群地上にうるり群
         うるり=小型の虻
2007年8月15日 夜濯ぎの妻の朝寝のしんしんと

朝ぐもりアールグレイは旨いねえ

2007年8月17日 どっと本流迸(はし)る白花白い蝶
2007年8月18日 天の川井戸汲む人は影絵かな
2007年8月21日 来ては去る百日紅(ひゃくじつこう)に黒揚羽 TT

はたらくはたらくひかりの薄揺れるよう

TT
2007年8月23日 天の川ごうごう流る竹似草
2007年8月24日 空腹でおまけに眠いレタスの花

ちょっとびっくり口中より枯葉出る

2007年8月30日 大銀河熟れて黄瓜のごろんごろん TT
2007年9月1日 満腹で眠る幸せ虫の闇

早朝の寝床秋にしのび寄られている

2007年9月4日 秋草ぼうぼうそして我らに行方なし
2007年9月5日 小さな源流現の証拠の花陰に
2007年9月10日 狐顔出せ赤釣舟黄釣舟
2007年9月13日 寝ころんで蟹と遊べよ秋の海
2007年9月15日 終らない花野行っても又行っても
2007年9月19日 秋の蚊の有情と鳴けば殺すなり

われら荒野のとなりに住みて秋を愛す

選挙カー鳩麦少女はけらけら笑う

2007年9月20日 雲が一つもない岬戻らねば
2007年9月22日  『白痴』の主人公ムイシュキン公爵
俳諧的な月の下にて彼と語らん
2007年9月30日 まだら雲満月は死のごとくゆったり
2007年10月1日 天に銀漢地に禿頭の散髪あり TT
2007年10月3日 蕎麦の実のいじけて黒いわけじゃない

からす嗚呼嗚呼大地の陰(ほと)に麦播けば

TT
2007年10月6日 堪らないミステリー死ということに秋の風
2007年10月9日 運動会はずれて一人蒼し空
2007年10月10日 ちろちろと燃える麦の芽を見たり
2007年10月12日 累累と蒲鉾のあり餓死者もあり
2007年10月20日 陽に身を陽に身を投げん馬葡萄 TT
2007年10月26日 下水掃除を旅路と言えば深い秋 TT
2007年11月1日 答えは何ごろんごろんと柿も栗も
問いは何ごろんごろんと柿も栗も
明星とどまり月いちもくさんの夜明け
2007年11月3日 狂者背後に紅葉の山を眺めている
泣けぺらぺらの気分のごとき枯葉
2007年11月10日 抱くには霜の大地は寒すぎる TT
2007年11月11日 人は口ぺちゃくちゃばりばり野沢菜漬
2007年11月12日 初冬ひかる禿頭掠め風雲迅し
凩を待つ木の手持無沙汰かな
2007年11月19日 芭蕉忌やひかりふつふつ粥煮える
2007年11月20日 外国産雑草根深覆うは猛烈たり
2007年11月23日 雪の野へ青野のごとく駆けだしぬ
2007年11月24日 木の葉散るおおむね遊びながらかな
2007年11月26日 冬の野は鉛筆書きのまるである
2007年11月29日 冬野にて筋肉運動しておりぬ
キリストの化石枯野の鉄塔は
2007年11月30日 冬の草しっかり俺に似てやがる TT
2007年12月2日 熟柿地に涅槃のごとき抱擁なり
川光る落葉蹴り蹴るまた光る
2007年12月3日 「永遠(とわ)に待つ」冬潦の水輪水輪
2007年12月4日 白猫は「涅槃」と鳴きぬ小鳥咥え
2007年12月6日 冬晴れの谷川光る光る骨
落葉松落葉を赤絨毯とは愚か
2007年12月7日 おずおずと、あのぼく冬の朝日です
2007年12月10日 犬と行く宇宙の明るい落葉道
2007年12月12日 首出せばアーメンと風冬温し
2007年12月14日 枯葦の骨(こつ)と音する銀河かな
2007年12月21日 株式市場煌々と冬日こわれけり
2007年12月22日 皎々と猿声陽あたる土間の葱
2007年12月28日 山はただ象蔵すごと眠るかな







俳諧寺